『製造業の生産性効率化』

『製造業の生産性効率化』

福島県よろず支援拠点コーディネーターの菊地です。
今回は生産性効率化(原価低減)を決算書の視点から切ってみる。
企業が最終的に欲しいのは“収益”であり、収益は「売上高-経費」で示される。生産性効率化(原価低減)は、この経費をいかに低減させるか!である。

経費は直接費、間接費に分類するのが世のスタンダードであるが、戦略的に原低を狙う場合、変動費、固定費という分類(管理会計という)で識別管理するのがベターだ。
変動費はまさしく、売上高に相関する費用であり、代表選手は、「材料費」「外注加工費」「パートタイマーの人件費」だ。しかし、パートタイマーと言えど、「忙しい時だけ来てね!」という雇用形態は極めて難しく、固定費として分類する場合が多い。
一方固定費は、売上高と相関のない費用である。人件費、減価償却費、販促費、リース料など挙げればキリがない。

ここで勘の良い人なら気づいたはずだが、変動費の削減は基本的に値引き交渉である。
取引関係のある取引先からより良い条件を引き出し、安値で仕入れる以外に方法はない。人の良い経営者は、仕入先との信頼関係を壊すことを恐れ、仕入先を固定化させる。これも一理あるのだが、資本主義経済のマクロ的仕組みから考えても、競争のない状態では価格低下は起こらない。レッドオーシャン市場になってはじめて価格下落が起こるのである。(レッドオーシャンについては、改めて書いてみたい)
変動費低減のための仕入先との交渉という要素から、がらっと色合いが変わるのが固定費の削減だ。固定費の削減は自己努力の原低活動となる。

製造業で大きく効いてくる固定費は、「人件費」「減価償却費」の2つであるのは、異論を挟む余地はないだろう。これら両者の絶対値を削減するのは困難だ(そもそも減価償却費は会計ルール上絶対値を下げるような勘定科目ではない)。
よって、従業者(人件費)と機械設備(減価償却費)に効率よく働いてもらうのが、原価低減活動の本体である。従業者であれば、「商品に付加価値を与えている稼働時間の割合を増やす」、機械設備であれば、「段取り時間の短縮、又は24時間稼働させる」などである。

これらが最終的な帰着点になるのだが、問題は効率化の基準とアプローチ方法だ。
生産性効率化を始めたばかりの企業は、作業動線、微作動分析などのIEからスタートするケースが多いのが特徴だ。
しかしここには落とし穴がある。せっかくIE的に効率化が図れていても、「不適合品」による原価アップについて意識が向いていないのだ。

不適合品が発生した場合の処置は、「廃棄」「手直し」「特別採用」であるが、この「廃棄」「手直し」には、人件費と減価償却費がくっついているという認識が薄い。
「せっかく買ってきた材料を捨てる」「もう一度最初の工程からやり直す」がどれほど経費増大に効いているのか検証したい。検証するには、製品1単位あたりの製造原価が明らかになっている必要があるのだが、意外にも製造原価が正しく算出されている企業に出会う機会が少ないのが残念である。

生産性効率化(原価低減)は、入念な準備体操が必要であり、戦略的に企てないと効果が発現し難い活動なのだ。いきなり腕立て伏せを始めて、筋肉痛で動けなくなっていないだろうか・・・


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